1960年に最初のレーザーが作られて以来、レーザー物理学者はレーザー技術の限界を推し進めてきました。
製造業では、技術者が高出力レーザーによって可能になるソリューションを常に開発しています。主に、素材へのマーキング、洗浄、テクスチャリング、溶接、切断を高速化し、生産ラインの短いサイクルタイムに対応するために使用されます。
高出力レーザーシステムは、一般的なレーザーと比較してかなりのエネルギー準位を発生させます。どの程度の出力が「高出力」と見なされるかについての公式な定義はありませんが、レーザーエキスパートのほとんどは、高出力レーザーが数百ワット以上であることに同意しています。
このページで扱うテーマの概要は次のとおりです。
製造業における高出力レーザー
高出力レーザーは、現在製造に使用されているさまざまな技術に代わる、効率的かつ正確で環境にやさしい代替手段です。高速生産ラインにおいて、レーザーマーキング、レーザークリーニング、レーザーテクスチャリング、レーザー溶接、レーザー切断に使用されています。
レーザーマーキング
この動画では、500 Wのパルスファイバーレーザーを使って高速で深い彫刻を作成しています。識別子はショットブラスト処理後も引き続き読み取りができます。
レーザーマーキングとは、例えば産業的なトレーサビリティを実装するために、部品や製品に恒久的な識別子を生成するプロセスです。高出力レーザーは通常、硬い金属へのマーキング、より多くの部品をより速く処理する場合や、素材に深く彫刻を行う場合に使用します。
レーザークリーニング
200 Wのパルスファイバーレーザーを使用し、組み立てに使用する特定のエリアからリン酸塩コーティングを除去します。信頼性に関わる問題を防止するために、組み立てエリアをコーティングしないようにする必要があります。
レーザークリーニングはレーザーアブレーションとも呼ばれ、さまざまな汚染物質(酸化物、油、コーティング、電解質など)を粉塵やヒュームとして飛散させます。このプロセスにより、溶接、コーティング、組み立てなどの作業前に金属表面が完全に浄化されます。
レーザークリーニングは、コーティング用途でマスキングの代わりに使用できます。繊細な領域をマスキングして残りをコーティングする代わりに、部品を完全にコーティングし、選択的にレーザー除去を使用して、正確にそのエリアからコーティングを除去します。
最大3 kWの超高出力パルスレーザー を使用すれば広い表面積を洗浄できますが、一般的にこの作業は500 W以下のレーザーでは時間がかかりすぎると考えられています。また、局部的なエリアや複雑な形状も非常に高速に洗浄することができます。
レーザーテクスチャリング
この動画では、高出力のシングルモードファイバーレーザーを使用して、円筒型のバッテリーケースを洗浄し、テクスチャリングしています。このプロセスにより、構造体バッテリーパックの熱融着による良好な接着品質を確保します。
レーザーテクスチャリングは、金属表面のテクスチャリングと粗さを変化させることで表面特性を変更します。溶射皮膜や接着接合などのプロセスのための表面前処理に使用します。
レーザー溶接
高出力パルスレーザーを使用し、数百個の円筒型電池セルをバスバーに溶接します。ロボットアームが圧力を加え、バスバーと電池の端子の間の隙間を0にします。
レーザー溶接は、2つの金属表面を溶融させて接合するプロセスです。連続波レーザーは、素材により深く浸透するため、通常は産業用溶接に使用されます。パルスレーザーは、EVバッテリー部品を溶接する場合など、熱影響部を狭くし、浅く溶接する必要がある繊細な部品に使用します。
レーザー切断
6000 Wの連続波ファイバーレーザーをCNC設備で制御し、厚い金属板をワークピースに切断します。
レーザー切断では、高出力レーザーを使用して素材(木、ガラス、プラスチック、金属など)を飛散させ、非常に正確な切断端を作成します。電子工学、医療、航空宇宙、自動車、半導体など、いくつかの産業で使用されています。
標準出力vs最大出力
高出力について理解するには、標準出力と最大出力の違いを理解することが不可欠です。
レーザーシステムの名前は、レーザーが時間経過とともに生成するエネルギーの平均量である標準出力に由来しています。高出力のレーザーは、同じ時間でより多くのエネルギーを生成できます。例えば、200 Wのレーザーは1秒間に、100 Wのレーザーが同じ時間で発生するエネルギーの2倍分を発生させます。
最大出力は、レーザーが生成できる最高レベルのエネルギーです。連続波レーザーは常に最大出力で動作しますが、パルスレーザー は設定した繰り返し率で短いエネルギーバーストを放出します。レーザーパルスを発生させ、より高いエネルギー準位に到達するために使用される技術として、モードロックレーザーやQスイッチレーザーなどがあります。
Laseraxでは、100 Wのパルスレーザーで1波が100ナノ秒のレーザーパルスを放出することができ、最大出力は10,000 Wにも達します。100 W以上のレーザーは同じ最大出力に達っしますが、毎秒より多くのパルスを放出します。例えば、500 Wのパルスレーザーは100 Wのパルスレーザーの5倍のパルスを毎秒放出できます。
レーザー出力カテゴリ
Laseraxでは、光出力を以下のように分類しています。
出力レベルカテゴリ | 出力 |
---|---|
通常出力 | 10 W~100 W |
高出力 | 200 W~500 W |
超高出力 | 500 W~3 kW |
レーザーマーキング、レーザークリーニング、レーザーテクスチャチング、レーザー溶接などの素材加工に使用するパルスファイバーレーザーです。1,064 nmの波長は金属加工に最適です。
高出力レーザーはどのように違う?
出力構成が異なると、要件も異なります。高出力レーザーは通常、レーザー光源が大きく発熱量が多いため、使用中にレーザーを冷却するための温度管理が必要となります。一般的な方法としては、空冷と水冷があります。
高出力レーザーは発熱量が多いため、オーバーヒートや燃焼を防ぐ高品質の光学構成部品を使用して動作します。
レーザースキャナーは部品構成の一例です。レーザーヘッド内でミラーが回転し、レーザービームを正確な位置に移動させ、方向を変更させます。焦げ付きを防ぐため、防熱用の特殊コーティングが施されています。同様の理由で、高出力レーザーは水晶のレンズを使用します。
シングルモードとマルチモードレーザーの出力差
レーザー出力が高ければ高いほど、レーザーがマルチモードに分類される可能性が高くなりますが、これは何を意味するのでしょうか?
シングルモードとマルチモードの違いについて見ていきましょう。
熱管理
シングルモードレーザーは光ファイバーコアが小さいため、レーザー光が集中して移動する面積が小さくなります。高出力の用途においては、これにより熱管理が複雑になります。一方マルチモードレーザーは、コアが大きく熱管理が容易です。それゆえ超高出力を必要とするレーザー用途に使用できます。
ビームの品質
シングルモードレーザーの方がビームの質が高いため、レーザービームをより小さなスポットに集中させることができます。そのため、レーザーマーキングやレーザーテクスチャリング用途に必要となる部品のエッチングに使用できます。
速度
マルチモードレーザーは、スポットサイズが大きくエネルギー準位が高いため、遥かに高速なレーザークリーニング速度に到達できます。
ファイバーケーブル長
マルチモードレーザーはより長いファイバーケーブルにアクセスでき、最大100 mに達することもあります。比較すると、シングルモードレーザーは多くの場合ケーブル長が5 mまたは8 mに制限されます。このため、マルチモードレーザーはロボットとの統合に最適です。
結論
高出力レーザーはメーカーに新たな可能性をもたらします。このような環境にやさしいソリューションは、製造プロセスにスピードと精度を提供しますが、安全性と効率性を確保するためには高度な専門知識が必要です。
レーザーを必要とするプロジェクトがある場合は、当社のレーザーエキスパートにお問い合わせください。