


長年、デバイスや電気自動車への電力供給は、リチウムイオン電池がその役割を担ってきましたが、現在、固体電池が次の担い手として注目されています。しかし、その主張はどの程度正確なのでしょうか?
誇大宣伝にもかかわらず、現在、固体電池を搭載した車を購入することはできません。大きな可能性を示していますが、個体電池が電気自動車で商業的に実現するまでの道のりはまだ遠いと言えるでしょう。それでも、大規模な研究開発投資により、今後数年間で現状を変えることを目指しています。
この記事では、固体電池が将来的にリチウムイオン電池よりも優れた選択肢になる可能性を秘めていると言える理由を探ります。
目次
リチウムイオン電池と固体電池の仕組み
リチウムイオン電池と固体電池の構造を詳しく説明し、主な違いを示してみましょう。
リチウムイオン電池の構造
リチウムイオン電池は、以下の主要部分で構成されています:
- アノード(負極):通常はグラファイト製
- カソード(正極):ニッケル、マンガン、コバルト、またはリン酸鉄(LFP)で構成されることが多い
- 電解質:溶液(通常は有機溶媒に溶解した液体塩)
- セパレーターアノードとカソードの間に配置され、液体電解質に囲まれています
リチウムイオンは、充電および放電中、液体電解質を介してアノードとカソードの間を移動します。リチウムイオン電池は効率的ですが、可燃性の液体電解質を使用しているため、安全性に関する懸念があります。
固体電池の構造
固体電池の構造はリチウムイオン電池に似ていますが、重要な違いが1つあります。
- アノード:多くの場合、リチウム金属またはリチウム合金製
- カソード:リチウムイオン電池と似ており、通常は金属酸化物(NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)など)で作られています
- 電解質:通常はセラミック、ポリマー、または硫化物で作られた固体
- セパレーター多くの場合、イオンの流れを維持するために固体電解質と統合されています。その役割は、イオンが流れるようにしながら、アノードとカソードが直接接触しないようにすることです
この固体電解質は、安全性と安定性の向上など、固体電池が提供する多くの利点の鍵となります。
固体電池の現在の課題
リチウム不足に関する懸念は残っていますが、リチウムイオン電池には現在、確立された製造インフラストラクチャが存在し、広く入手可能です。成熟した技術であるにもかかわらず、リチウムイオン電池の性能、寿命、安全性を改善するための継続的な研究開発は続いています。
固体電池は依然として、主に研究室と小規模な試作品に限定されています。そして、リチウムイオン電池よりも主流となるには、克服すべき重要な課題がいくつかあります。
高い生産コスト
固体電池に使用される材料(特に固体電解質)は、現在、リチウムイオン電池に使用される材料よりも高価です。製造プロセス自体がより複雑で、特殊な設備が必要です。
既存の電池製造設備は液体電解質電池用に設計されているため固体電池の製造には適していません。そのため、新たに特殊な設備を大規模に開発・生産する必要があり、多額の投資が必要になります。
技術的な課題
メーカーが懸命に取り組んでいる技術的な課題もいくつか存在します。
- 亀裂形成:最も重要な課題の1つは、充電サイクル中に固体電解質に亀裂が生じることです。亀裂が生じると、時間の経過とともに内部抵抗が増大し、バッテリー性能が低下する可能性があります。
- イオンの伝導性:固体電解質には安全面における利点がありますが、室温で液体電解質に匹敵するイオン伝導性を実現することについては依然として課題があります。
- スケールアップ:実験室規模の小型バッテリーで機能するものを、電気自動車に必要なサイズにスケールアップすると、新しい課題に直面することがよくあります。
こういった課題にも屈することなく、大手の自動車企業やテクノロジー企業はこれらのハードルを克服するべく多額の投資を行っています。固体電池について、多くの専門家は、今後5~10年以内に商業的に実用可能になり、電気自動車やその他の用途のエネルギー貯蔵に革命をもたらすことになると考えています。
主な比較
機能 | リチウムイオン電池 | 固体電池 |
エネルギー密度 | 160~250Wh/kg | 250~800Wh/kg |
安全性 | 液体電解質が原因の過熱や可燃性のリスク | 火災のリスクが大幅に低下した不燃性固体電解質 |
寿命 | 高温、重放電サイクル、高再充電率などによって生じる化学反応により、時間の経過とともに劣化する | 寿命が延びる可能性はあるが、現在は亀裂形成の課題に直面している |
充電速度 | 中~高速、温度に敏感 | 超高速充電が可能 |
現在の入手可能性 | 広く入手可能で、製造インフラストラクチャが確立されている | 主に研究室、ならびに小規模生産と試作品 |
生産状況 | 改良が進行中の成熟した技術 | 生産コストが高く、充電/放電時に亀裂が生じる。大量生産への移行前に 解決する必要がある |
商業化 | 現在、電気自動車やその他の用途で使用されている | 2026~2027年頃に電気自動車で商業化の見込み |
主な利点 | 現在は個体電池よりも堅牢で利用可能性の高い、確立された技術 | エネルギー密度および安全性が高く、充電速度が速い |
主な課題 | 安全性に懸念があり、エネルギー密度が限られている | 生産コストが高く、規模の拡大における技術的問題がある |
エネルギー密度
電気自動車に使用されるリチウムイオン電池のエネルギー密度は通常、160Wh/kg(LFP化合物)から250Wh/kg(NMC化合物)です。現在、これらの数値を改善するための研究が進行中です。例えば、横浜国立大学では、LFP電池のエネルギー密度を向上させるためにアノード中のマンガンを研究しています。
固体電池ははるかに高いエネルギー密度を提供する可能性があります。薄膜タイプは300~800Wh/kgに到達でき、バルクタイプは約250~500Wh/kgです。MercedesとFactorialによる最近の研究では、新しいタイプの固体電池で450Wh/kgを達成したということですが、同等のリチウムイオン電池と比べると、33%小さく、40%軽量です。
安全性
リチウムイオン電池の液体電解質は過熱や可燃性のリスクがあると言われていますが、多くの場合、実際のリスクより誇張されています。
メリーランド大学の化学および生体分子工学の教授であるChunsheng Wang氏は、 「研究を重ねるごとに、電気自動車で使用した場合の安全性やさまざまな問題を解決できるという自信が高まっています」とNBCニュースに語りました。
固体電池の場合、不燃性の固体電解質を使用しているため、火災のリスクが大幅に下がり、ガス抜きの問題も解消されます。温度の面でも制御が簡単です。
寿命と耐久性
リチウムイオン電池は 化学反応が原因で時間の経過とともに劣化し、寿命が短くなります。固体電池の方が寿命が長い可能性はありますが、現在、充電および放電サイクル中に固体電解質に亀裂が生じ、抵抗が増大するという課題に直面しています。
充電速度
リチウムイオン電池は中速から高速の充電が可能ですが、温度に敏感です。
固体電池は超高速充電が期待でき、試作品の中には数分以内に充電が80%に達するものもあります。温度変動の影響も受けにくくなっています。
最近のブレークスルーとイノベーション
研究機関と企業は、リチウムイオン電池と固体電池の両方の技術において進歩を遂げています。
- マギル大学は固体電解質の多孔性を高めることにより、亀裂の発生を減少させ、耐久性を向上させました。
- 両タイプの電池で、エネルギー貯蔵容量と伝導性の向上のためナノ粒子技術が使用されています。
- テスラは、電気自動車バッテリーの寿命を15~20年にすることを目標に、リチウムイオン電池のNMC化合物とLFP化合物に注力しています。 中国製電気自動車に対する最近の規制により、北米における電気自動車のLFP電池は一般的でなくなると予想されますが、電池エネルギー貯蔵システムでは今後も使用されます。
継続的な研究開発により、両方の電池タイプの改善が図られています。固体電池は、電気自動車向けの急速充電、高エネルギー密度ソリューションを約束する大きなブレークスルーにより、2026~2027年頃に商品化されると予想されています。世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、2027~2028年にバッテリー充電時間が10分、走行距離が620マイル以上の車の量産を計画していると述べました。
優れているのはどちらか?
この質問に対する答えは、電池の評価を現在のニーズに基づいて行うか、将来の可能性に基づいて行うかによって異なります。
リチウムイオン電池は現在、より堅牢で、入手可能性が高いですが、安全性と寿命に関しては懸念があります。固体電池はエネルギー密度、安全性、充電速度の点で優れていますが、開発はまだ初期段階で、製造コストは高額です。
研究が進み、製造プロセスが改善されるなか、残りの課題が解決されれば、固体電池が電気自動車のバッテリーとして好ましい選択肢になるでしょう。しかし、現時点では、ほとんどの用途においてリチウムイオン電池の方が実用的な選択肢です。
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